2022 プレゼミB(つづき)
プレゼミAとBで学んだことを研究に移す練習として、研究計画書を作成しました。実際に研究に移してはいませんが、研究テーマ設定の大きさ、具体性など、どのようにしたらよいのかを体感しました。
・女性コミュニティ内で使用されるぼかし表現の頻度
・書き言葉と話し言葉における心の比喩表現に使用実態
・子どもの会話における終助詞表現のジェンダーによる差
・言葉は狩り尽くされるのか:性差別表現を通して
・嘘をつくことに対する認識尺度の年代別による違い
・書き言葉的文章中おける話し言葉的接続詞「なのに」の使用について
・大学生における冗談の解釈の男女差
・播州弁の使用実態:播州弁は絶滅するのか
・大学生における親密度による「からかい」の教養範囲の変化
2022 プレゼミB
ゼミ生が自ら選択した言葉に関する新書を紹介し、提案されたテーマでディスカッションをしました。選択された本とディスカッションテーマを紹介します。
1.岡本真一郎『言語の社会心理学:伝えたいことは伝わるのか』中公新書
ー「無害なからかい」vs. 「悪意のあるからかい」、きちんと伝わるのか
2.真田信治『方言は絶滅するか:自分の言葉を失った日本人』PHP新書
ー絶滅の危機に瀕している言語を保存する必要はあるのか
ー新語が地域に根差す過程はどのようなものか
3.鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書
ー指示対象の領域と言語学習のしやすさに関連性はあるのか
4.今野真二『百年前の日本語:書き言葉が揺れた時代』岩波新書
―現代日本語の言葉の揺れにはどのようなものがあるか
5.今野真二『うつりゆく日本語をよむ:ことばが壊れる前に」岩波新書
ー匿名性の高まりの中、今後の「わたし」は、「強気な私」と「消えていく私」どち
らになるのか、それは話し言葉、打ち言葉、書き言葉で変化するのか
6.和泉悠『悪い言語哲学』ちくま書房
ー嘘の定義を考える
―総称文(大きな主語)を使っても問題のないときは?
8.古田徹也『いつもの言葉を哲学する』朝日新書
ーあなたが知っている言語で、日本語では説明できないような意味合いの語はあるか
2022 プレゼミA
2022年度プレゼミAでは、石黒圭『日本語は空気が決める:社会言語学入門』を読みながら、ゼミ生が提案したテーマに基づいて、ディスカッションをしました。それらの作業を通じて、言葉を多角的にみること、言葉への感受性は多様であることを理解していきました。
以下にディスカッションテーマをご紹介します。
1.言葉を通してその背後にあるアイデンティティを見ている、表明しているとのこと
ですが、現在のあなたの言語行動やアイデンティティの特徴はなんですか
2.方言ではなく標準語を使用する利点はなんですか
3.あなたが思う「隠れた方言」を教えてください
4.話し手が使う言葉遣いに違和感を覚えたことはありますか、どのようなものですか
5.普段の生活で、ポジティブ・ポライトネスとネガティブ・ポライトネス、どちらを
重視しますか
6.同い年・先輩・先生・お客さんと話す時、どのような話し方をしますか。親しい人
と初対面ではどうでしょうか。話し方の差はについて考えてみてください
7.自分の話し言葉と書き言葉を振り返って、どのように話し言葉性・書き言葉性をコ
ントロールしていますか、意図的ですか
8.コード・スイッチング、コード・ミキシングの意図を教えてください
9.私たちの文化的価値観は、談話構造にどのような影響を与えているでしょうか
10.英語の公用語化についてどのように思いますか
11.言語を保護するために行われていること、行われるべきこととは
2021 演習I-国際教養学部2年ゼミ (2021.10)
9月から始まった2年生後期「演習I」では、会話に注目します。
社会生活は、人と人との相互行為(やりとり)を通じて成り立っている。
これら[親しい人と楽しい時間を過ごしたり・・・電車の中の見知らぬ乗客と目が合っ
てすぐそらしたり]多様な相互行為に参加しその中で適切にふるまう能力は、人間が社
会生活を送るうえで、非常に重要なものである。串田他『会話分析入門』p.1
このような相互行為能力に焦点をあてた会話分析の研究内容と手法を学び、実際に 自分たちの会話の分析を試みます。以下のようなプロセスで、最終的には自分たちの会話データを分析し、論文を作成します。
1.以下の本を毎週1章ずつ読み進めながら、会話分析の考え方と手法を学びます。
串田秀也・平本毅・林誠 (2017)『会話分析入門』勁草書房
2.ゼミ生同士のおしゃべりを録音します。
3.録音を書き起こして、会話分析のためのデータを作成します。
4.本で読んだ内容をふまえて、自分たちの会話を見つめ直します。
5.テーマを設定して、自分たちの会話を分析します。
6.共同でレポートを作成します。
昨年度の研究テーマは以下でした。
・オーバーラップ対処の傾向
ー話始めに音声が重なることがあります。私たちは、声が重なったときにどのよう
に対処し、会話を継続させているのでしょうか
・会話に発生する司会的役割と話題の転換
ーおしゃべりの中で会話を回す役割の人っていませんか。会話では話題が次々と転
換していきます。話題の転換の仕方と会話を回す人の関係性を探ります
・発話冒頭に使用される「あ」「え」の役割と分類
ー発話冒頭に発せられる「あ」や「え」。これがスムーズな話題継続、進展、転換
にどのような役割をはたしているのでしょうか
2021 プレゼミB報告-国際教養学部2年ゼミ (2021.8.4)
6月から7月に開講された「プレゼミB」では、各自が選択した言語に関する新書の紹介と批判的考察の発表、続いて発表者が提示したテーマに沿ったディスカッションを行いました。
ゼミ生が選択した本は以下、読んだ順。
野口恵子 (2013) 『失礼な敬語:誤用例から学ぶ、正しい使い方』光文社
秋月高太郎 (2005)『ありえない日本語』ちくま新書
小林隆・沢村美幸 (2014)『ものの言い方西東』岩波書店
川本茂 (1986)『ことばとイメージ』岩波書店
今井むつみ (2010)『ことばと思考』岩波書店
野口恵子 (2004)『ヵなり気がかりな日本語』岩波書店
北原保雄 (2017)『しっくりこない日本語」小学館
金田一春彦 (2016)『美しい日本語』角川書店
選択した本を通じてそれぞれの興味が見えてきました。ディスカッションを通じて、人それぞれ言語感覚に差異があること、そして「今」の言語感覚とはずれている本の記述を通じて言語変化への気づきなど、ゆるゆると言語研究への扉をたたいています。
2021 プレゼミA報告-国際教養学部2年ゼミ(2021.8.4)
専門ゼミのスタートの4月と5月は、以下の本を読みながら。言語を対象とした研究の概要をつかみました。
石黒圭 (2013)『日本語は「空気」が決める:社会言語学入門』光文社
各章の内容のまとめをしたあとは、発表者の提示したテーマでディスカッションをしました。取り上げられたテーマは以下の通り。
1.選択する言語とアイデンティティの関係性:何をどのように意識しているのか、
横浜に来たからこそ気が付いたことはあるか
2.標準語を使うことで付加価値が得られるのはどのような場面か
3.言葉遣いの移行(世代語)の体験
4.横の関係と縦の関係をグラフにあてはめて自らの言語行動を考察したときに、
何か使用傾向はあるか
5.同一人物と話す時に丁寧体と普通隊を使い分けることはあるか、
それはどのような状況か
6.話し言葉と書き言葉の混同、違和感等の体験
7.家族の呼び方について:他者に対して自分の親をどのように称するか
8.早期英語教育の体験と影響
9.差別語とは
10.言葉の省略、何をどのように省略しているのか
11.言葉の変化が起こっていると感じたことはあるか
12.母語+英語+もう一言語、このもう一言語には何が良いか
ディスカッションは一人一人の内省によるものでしたが、ここからゼミ論、卒論のテーマとして成立しそうな問がたくさん出てきました。文化庁『国語に関する世論調査』、国立国語研究所、NHK放送文化研究所の各種調査などのデータにあたってみると次のステップに進むことができそうです。